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扁桃体(情動)と前頭前野(意欲)が記憶を左右する
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扁桃体(情動)と前頭前野(意欲)が記憶を左右する

 
 一時的な短期記憶や、大脳皮質への長期記憶の保存を取り仕切っているのが海馬ですが、さすがにこの小さな器官一つでは荷が重いようです。
 この海馬と密接につながっている器官に、同じく大脳辺縁系にある扁桃体(へんとうたい)があります。さらに、意欲や創造、計画、実行にかかわる前頭葉も記憶に無関係ではありません。
 ここでは記憶の形成に大きな影響を持つ、海馬以外の脳の器官について説明していきます。

喜怒哀楽の感情や好き嫌いを決める扁桃体

 扁桃体は深い情動にかかわり、喜怒哀楽や好き嫌いの感情をつかさどっていることで知られます。五感を通して大脳皮質に伝わった情報は、海馬だけでなく扁桃体にも伝わり、その内容によって大小さまざまな感情を引き起こします。

 たとえば、「あのコ、可愛いな」「ゲッ、嫌な臭いだ」「あっ、あの服、欲しい」「うっせー奴らだな」…なんて気持ちが湧くのは、すべて扁桃体の仕業なのですね。

 海馬が記憶という知性に関係の深い精神作用に関係するのに対して、扁桃体は情緒面に深くかかわっているといえるでしょう。知性と情緒。一見、正反対の立場にあるように思える両者ですが、実は海馬と扁桃体は隣り合った場所にあり、両者は太い神経細胞で密接につながっているのです。

 そのため、扁桃体の喜怒哀楽や好き嫌いの感情は、海馬に作用して記憶の形成に影響を与えることになります。逆に、過去の記憶が現在、見聞きしていることに情緒的に影響を与えることもあり得ます。知性と感情は完全に独立したものではないことが、脳科学の面からも裏付けられているといってよいかもしれません。

 【長期記憶の仕組み・イメージ図】

大脳皮質、海馬、扁桃体の関係


扁桃体を意識的に利用する記憶術

 だれでも、自分が感情を揺さぶられた大きな出来事はよく覚えているものです。また、奇妙な出来事とか、めったに起こらない出来事も忘れません。これは、情動をつかさどっている扁桃体が記憶に影響を与えていると考えられます。

 実は、イメージで覚える記憶術では、こうした長期記憶の仕組みを意識的に利用しているのです。記憶術のトレーニングでは、イメージをつなぎ合わせて視覚的に印象に残るストーリーを作りますが、そのとき「できるだけ突飛なイメージを作る」ことが、上達のポイントとなります。
 記憶法と記憶術の違い/イメージ連結法」参照

 また、記憶術では覚える際に、できるだけ「感情移入」しながら覚えるというのも、重要なテクニックの一つです。俳優が長いセリフを覚えられるのも、感情をこめて覚えるからです。つまり、扁桃体が記憶に与える影響を最大限に利用しているわけです。

前頭葉(前頭前野)の役割

 脳科学ブームの到来とともに、かつての右脳・左脳ブームは下火になってきました。言語・論理をつかさどる左脳よりも、図形・空間認識などにかかわる右脳のほうを鍛えたほうが頭が良くなるかのような論調は、影をひそめています。

 替わって注目を集めているのが前頭葉です。前頭葉は頭の前の部分の領域を指しますが、さらに前後2つの領域に分かれ、その前の部分を前頭前野と呼びます(一般には前頭前野のことを前頭葉と呼ぶことが多い)。前頭前野は、右脳と左脳を含む大脳全体の司令塔ともいうべき役割を果たしています。具体的には、私たちが生活しているあらゆる場面で、意欲、計画、工夫、実行などにかかわっています。

 一つひとつは簡単な作業でも、関連した一連の手順をよどみなく行うには、司令塔である前頭葉の働きがなくてはできません。たとえば夕食を作る場合でも、献立を考えたり、何品かの料理を手際よく作り上げるのは、前頭葉の仕事です。意欲、計画、工夫、実行のいずれが欠けても、物事が前に進まないのです。

前頭葉と記憶および記憶術について

 最後に、前頭葉と記憶や記憶術にの関係について考えてみましょう。関係するのは意欲と工夫の部分が大きいと思われます。  まず、勉強などでの記憶では、覚えるべき事柄に対しての興味(知識への意欲)があるかないかで、かなり効果に差が出ることは誰もが経験することです。また、学習への積極的態度や覚えようという意欲も、記憶の成果に関係します。これはスポーツなどの体で覚える記憶についても同様のことがいえます。

 次に工夫ですが、単純な繰り返し学習よりも、自分なりに何らかの工夫した覚え方をしたほうが効果が高いのは、言うまでもありません。工夫は、一時的には試行錯誤をして時間のムダのように見えても、長い目で見れば効率が確実に一ランク上がっています。

 記憶術については、まず「記憶術が面白おかしく覚える方法である」ということから、いやいややっていた勉強に意欲がわくというメリットがあります。また、自分なりのイメージを作って覚える(工夫する)というのが鉄則になりますから、前頭葉最大の能力である創造性を発揮しやすい脳環境になります。

 「記憶術は右脳を使う」ということがよく言われますが、正しくは「前頭葉を最大限に利用する記憶法」なのです。

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